映画『二重生活』のあらすじネタバレと感想や評価をまとめました!
以下、あらすじやネタバレが含まれる記事となりますので、まずは映画『二重生活』作品情報をどうぞ!
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映画『二重生活』作品情報
公開
2016年(日本)
監督・脚本
岸 善幸
キャスト
門脇 麦(白石 珠)、長谷川博己(石坂志郎)、菅田将暉(鈴木卓也)、リリー・フランキー(篠原弘)
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映画『二重生活』あらすじとネタバレ
大学院で哲学を学ぶ珠は、修士論文のテーマを何にすればよいのか悩んでいました。
担当の篠原教授にアドバイスを求めたところ、教授は、「哲学的尾行」をやってみてはどうかと提案します。
対象者を一人選んでその後を尾行し、行動や生活を気づかれないように記録する。
その対象者の人生を通して、人間とは何かを考察するというのです。
さらに教授は、決して対象者と接触してはいけないと付け加えました。
突拍子もない提案に面食らった珠は、少し考えさせてくださいと答えます。
立ち寄った書店で、珠は自分のアパートの向かいに住む石坂を見かけます。
やり手編集者の石坂には、美人の妻と可愛い娘がおり、大きな家に住んでいて、その暮しぶりは近所からも羨ましがられる存在でした。
珠は、石坂家のアパートの向かいに、ゲームデザイナーの卓也と同棲中でした。
書店を出ていく石坂の背中を、衝動的に追いかけてしまう珠。
その後、カフェに入った石坂の前に現れたのは、石坂の愛人らしき女性でした。
カフェを出た二人は、珠の尾行にも気づかず、建物の陰で激しく求めあいます。
石坂と別れた愛人を尾行した珠は、彼女の住居と名前を調べることに成功しました。
休日、珠が自分の部屋のベランダから石坂の家を見下ろすと、妻子と楽しげに笑いながら、良き夫、良き父を演じている石坂が見えました。
石坂の二面性を覗き見るにつれて、珠はどんどん「哲学的尾行」にのめり込んでいくのでした。
卓也は、珠の外出が増えたことと、二人の会話が少なくなったことに不信感を抱き始めています。
一方、教授は、がんで余命二カ月という母親の病室に、妻になるという女性を連れてきて紹介します。
独り身の教授を案じていた母親は、しあわせそうな息子の姿に、安堵の微笑みを浮かべるのでした。
尾行を続ける珠は、石坂と愛人が会う約束をしていたホテルを突き止め、ロビーで待ち伏せます。
ホテルを出た二人はレストランに入りますが、離れた席に座っている珠に、二人の言い争う声が聞こえてきました。
石坂に何かを言い捨てて、愛人は店をとび出します。
愛人の後を追う石坂を見た珠も、大急ぎで支払いを済ませて店の外に出ます。
石坂が止めるのも聞かず、愛人はタクシーに乗り込みホテルに戻ってしまいます。
店の前には妻と娘が立っていて、石坂と愛人をずっと外から見ていたのでした。
怒りに燃える妻は、石坂と娘を残して愛人のいるホテルへ向かい、珠もその後を尾行します。
ホテルに着いた珠は、フロントで騒ぐ妻を横目に、こっそり化粧室に入ります。
そこには愛人がいて「あなた、さっきの店にもいたわよね」と話しかけてきます。
「奥さんに頼まれて私達の後をつけているの?」と責められた珠は、うろたえながらも否定します。
ホテルをとび出し、道端で泣き崩れる妻を見て、珠はなすすべもなく立ち尽くすのでした。
朝方、ようやく家に帰った珠は、疲労のあまりベッドに倒れこんでそのまま眠ってしまいます。
その寝顔を、何か問いたげに見つめ続ける卓也。
ある夜、救急車の音で珠が外に出ると、自殺を図った石坂の妻が担架で運ばれていくところでした。
青ざめた妻の顔を見て茫然とする珠ですが、自分のことを凝視している石坂に気づき、激しく動揺します。
一命をとりとめて病室で眠る妻を見つめ、何かを考えている石坂。
愛人から珠のことを聞いていた石坂は、その夜以降、珠のことを追いかけ回します。
何か自分に恨みでもあるのか、そう石坂に問いただされても、対象者と接触してはいけない珠はどう答えていいのかわからず、逃げ出してしまいます。
混乱した珠は教授に何度も電話をかけますが、教授は母親の死と向き合っている最中で、珠の電話に応えることはありませんでした。
珠は卓也に尾行のことを打ち明けますが、卓也には珠の行動が全く理解できません。
追い詰められた珠は、ついに石坂と喫茶店で会い、全てを打ち明けて謝罪します。
妻に雇われたのではなく修士論文のためだったと聞いて、石坂は呆れ、激怒します。
二人は居酒屋で話を続けますが、石坂に「尾行してどう感じたか」と聞かれ、酒も入っていたせいか「面白かったです」と正直に答えてしまう珠。
自分のことを論文に書くのは絶対に許さないと言い切る石坂に、泥酔した珠は書かせてくださいと懇願し、そのまま床に倒れて眠ってしまいます。
居酒屋の外で介抱された珠は、酔っぱらったまま石坂にキスをします
最初は驚いて拒んだ石坂ですが、そのまま勢いで二人はホテルへ入ります。
しかし石坂の娘からメールが入り、その着信音を聞いた石坂は我に返ります。
気まずい空気の中、珠は、初恋の人の死や人生の喪失感、いつもからっぽだった心が尾行で満たされていく感覚など、自分の内面を正直に打ち明けます。
しかし石坂は、珠の話を「陳腐でありふれてる」と一笑し、「満たされている人間などいないんだ」と厳しい言葉を投げつけます。
傷ついて泣きじゃくる珠に背中を向けていた石坂ですが、最後には論文を書くことを許すのでした。
ホテルから出てタクシーに乗り込む二人を、陰から卓也が見つめています。
珠が教授に石坂の件を報告すると、教授は、次は対象を変えてでも、論文を完成させたほうがいいと言います。
教授が論文に期待していると知った珠は、教授を次の対象者に選ぶことにします。
教授の尾行を始めてみると、教授は石坂と違い、妻らしき女性と仲むつまじく、とても穏やかに暮らしていました、
珠は気づいていませんが、女性は、母親を安心させるために教授が雇った、ある劇団の女優だったのです。
卓也は、論文のことしか頭にない珠に別れを告げ、アパートを出ていきます。
卓也がいなくなった部屋で論文を書いていた珠は、悲しさに涙をこぼします。
ようやく完成した修士論文を読んだ教授は、たいへんよく書けていますと誉めますが、事実と違う点があるから確かめなさいと、芝居のチケットを珠に手渡します。
芝居に出掛けた珠は、小さな舞台の上の女優を見て、教授の妻ではなかったと知るのでした。
妻役を終えて女性が去った後も、彼女のことが忘れられない教授は、パソコンのコードで自殺を図ります。
季節は移り変わり、新しい生活のために引っ越しをすることに決めた珠。
家具の隙間に落ちていた封筒を拾いあげ、中を見るとそれは、卓也が描いた珠の寝顔のスケッチでした。
アパートを後にした珠の前を、まるで何事もなかったかのような明るい笑顔で、石坂一家が通り過ぎていきました。
そして時が過ぎ、駅の人混みの中を一人、歩いていく珠。
そのすぐ近くを卓也が歩いていますが、お互い相手には気づかぬまま、二人の距離はどんどん離れていきます。
横断歩道を渡りながら、ふと気配を感じた珠は、ゆっくりと後ろを振り返りました。
歩道の向こうに、篠原教授の足元と、結婚指輪をはめた左手が目に入ります。
珠は微笑み、また歩き出すのでした。
映画『二重生活』の感想と評価
篠原教授の言う「哲学的尾行」とは、フランスの芸術家ソフィ・カルが、「尾行によってアイデンティティを探る」という手法について書いた著書「本当の話」からくるというのですが、正直、違和感でした。
珠の尾行が下手すぎるというツッコミは、珠もプロではないので仕方ナシとします。
しかし、単なる偶然から狙いをつけた石坂が、あれほどわかりやすいゲス人生ではなくて、何のドラマもない平々凡々な男だったら、珠はあそこまで尾行という行為に夢中になれたでしょうか。
結局、珠がたどり着いた結論は「裏切りも隠しごともない人生などない。だからこそ他人の立場に自分の身を置き換えることが、お互いがかけがえのない存在だと知る唯一の道なのだ」云々。
まわりくどい言い回しですが、ひとことで言うとそれは人として当たり前の「思いやり」であり、赤の他人や恋人にさんざん迷惑をかけた挙句に初めて気がつきましたというのもいかがなものかと、個人的には思います。
妻に浮気が発覚したことを一方的に珠のせいにするという、石坂の大人げない逆ギレにはただただ唖然ですが、篠原教授の母親への愛情と疑似妻への恋心には、不覚にも涙腺がゆるんでしまいました。
[adsense]まとめ
2012年に単行本化された、小池真理子によるオリジナル小説の映画化です。
小説とは内容が異なる部分もあり、人によっては結末の好みが分かれるところ。
「人間は何のために生きるのか」という難問を、哲学で解決しようともがく珠。
珠のように、生きることの意味を追及せずにはいられない、人生これからの若い世代と、石坂のように、心に嘘や秘密を抱えることで、なんとか人生をやりすごそうとしている中年世代。
両者どちらかのスタンスに「あるあるある!」と共感できるなら、心にグッサリきそうな作品です。
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