映画『ブルーに生まれついて』のあらすじネタバレと感想や評価をまとめました!
以下、あらすじやネタバレが含まれる記事となりますので、まずは『ブルーに生まれついて』映画作品情報をどうぞ!
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映画『ブルーに生まれついて』作品情報
公開
2016年(アメリカ)
原題
Born to Be Blue
監督
ロバート・バドロー
キャスト
イーサン・ホーク、カルメン・イジョゴ、カラム・キース・レニー、トニー・ナッポ、スティーブン・マクハティ、ケダー・ブラウン、ケヴィン・ハンカード
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映画『ブルーに生まれついて』あらすじとネタバレ
堕落した生活
1966年、イタリアの刑務所に拘留されていた白人トランペット奏者のチェット・ベイカーは大汗を掻いて悪夢から目覚めます。そんな彼のもとに、アメリカから迎えがやってきます。彼の自伝映画を彼自身の出演で撮りたいというオファーでした。
1950年代。チェットはウエストコーストジャズの立役者としてもてはやされ、ジャズ界のジェームズ・ディーンと称される人気ものでした。
ニューヨークの名門ジャズクラブ「バードランド」に初めて立った彼はマイルス・ディヴィスら錚々たるジャズミュージシャンの前で自信を持って演奏します。
しかし、マイルスの感想は辛辣なものでした。「バードランドでの演奏はお前にはまだ早い」。その言葉はチェットにとって苦い想い出として残りました。
チェットは恋人がいるにもかかわらず、楽屋に帰ると娼婦とたわむれ、ドラッグに溺れます。そこへ恋人が現れ、彼らは激しく口論しますが、実はこのシーンは自伝映画の撮影でした。
実際、彼はドラッグがらみのトラブルを数多く起こしており、公演先のイタリアで収監されていたのもそのせいでした。
撮影後、チェットと、恋人役を演じるジェーンが外に出たとき、ドラッグのディーラーたちが待ち伏せしていて、いきなりチェットを襲います。
このトラブルにより、映画制作は中止、チェットは顎をくだかれ、歯を折られ、入れ歯をせざるをえなくなります。再起不能だろうと誰もが思い、彼を支えてきた人も堪忍袋の緒が切れたとばかり離れていってしまいます。
再起への日々
そんな彼をただ一人支えたのが、ジェーンでした。ウエストコーストの海の見える場所にとめたキャンピングカーで暮し、二人は愛をはぐくみます。
チェットはひとときも、トランペットを離さず、口の痛みに耐え再起を目指します。ドラッグの誘惑も断ちました。
しかし再起の道は思った以上に険しいものでした。ピザ屋で演奏するまでに回復しますが、共演したミュージシャンに「もう少し練習してきてくれないか」と言われる始末です。
チェットはジェーンとともに故郷の父母を訪ねます。父もかつてはレコードを出したことがあるミュージシャンでした。「父さんは諦めてしまったが、自分は決して諦めない」と言うチェットに向かって彼は言います。「音楽は諦めたが、お前のように家名を汚してはいない」。
西海岸に戻ったチェットは、音楽プロデューサーのディック・ボックに頼み込んで仕事を回してもらい、徐々に輝きを取り戻していきます。彼が奏でる音には怪我をする前にはなかった「味わい」が加わっていました。
彼の演奏を聞こうと、レコーディングの場に多くの音楽関係者が集まりました。その中にチェットが敬愛しているトランペット奏者のディジー・ガレスピーがいました。
演奏は素晴らしいものでした。チェットはディジー・ガレスピーに「バードランド」への出演を直訴します。
承諾を得て有頂天のチェットはジェーンも一緒にニューヨークに行ってくれるように頼みますが、オーディションがあるからと断られてしまいます。中止になった映画の仕事以来、まったく仕事を得ることができなかった彼女にとってそれは大きなチャンスなのです。赤ん坊のようにダダをこねるチェットを彼女は突き放してしまいます。
彼の選択
ニューヨーク。ガレスビーやマイルスをはじめ、多数の人々がチェットの復活を見ようと「バードランド」につめかけていました。
ディック・ボックは楽屋のチェットを訪ねますが、彼が見たものは、テーブルに置かれたドラッグと注射器でした。「これをすると自信がつくんだ」「今日が最後のチャンスなんだ」、そこにはプレッシャーに押しつぶされそうなチェットがいました。
「やめておいたほうがいい」と説得するディックでしたが、ついに根負けし「自分で選べばよい」と言ってその場を離れます。
開演時間を大幅に過ぎ、ようやく出てきたチェットは「アイヴ・ネヴァー・ビーン・イン・ラブ・ビフォアー」を歌い始めます。
その時、ジェーンが会場に現れました。オーディションの日が一日ずれたのです。演奏に耳を傾けていた彼女ですが、次第に表情が曇っていきます。彼がドラッグを使ったことを悟ったのです。彼女は静かに去っていきます。
一曲目が終わり、会場は拍手に包まれます。あのマイルスも拍手を送っています。
再びチェットは演奏をはじめるのでした。
『ブルーに生まれついて』の感想と評価
1950年代に白人ジャズトランペッターとして一世を風靡しながら、ドラッグに溺れ波乱の人生を歩んだチェット・ベイカーを描いた作品です。
演じるはイーサン・ホーク。「恋人までのディスタンス」に始まるリチャード・リンクレイターとのタッグで知られている個性派俳優です。トランペットの演奏や歌は吹き替え無しで全て彼自身によるもの。味わい深い演奏と歌声を聞かせてくれ引き込まれます。
天賦の才を持っていながら、ドラッグを断ち切れず、恩になった人を裏切り、女性に依存する主人公は、見ようによっては苛立ちを与える存在ですが、映画はこの男の脆く、弱い人間性がどこか甘美な魅力となって立ち上がってくる様子を描いています。
ウエストコーストの微風が伝わってくるような爽やかな風景と、小綺麗なキャンピングカーでの生活が、彼の壮絶な人生の中の束の間の幸福として瞬きます。
彼にはウエストコーストが似合っていたのでしょう。ニューヨークは彼にとって戦場のようなものだったのかもしれません。
マイルス・ディヴィスを演じたケダー・ブラウンが激似なのも見どころのひとつです。
まとめ
実はジェーンという女性は映画のために創作されたキャラクターなのです。実際のチェット・ベイカーの女性関係は映画のようにロマンチックなものではありませんでした。ではなぜ、映画はそのような脚色を行ったのでしょうか。
ロバート・バドロー監督はチェットの謎めいた死を扱った短編を撮っているくらいジャズに精通した人です。ですから安易な気持ちでジェーンを登場させたのではないはずです。
監督は、映画の中でもう一度チェット・ベイカーに「生きてもらいたかった」のではないでしょうか。どこかに救いをもたせたかったのではないでしょうか。
チェットの甘い歌声や演奏から浮かぶイメージを映像として残すこと、本作はいわば監督の夢の具象化なのです。
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